2021年の北海道を、気候に着目して振り返ると、いくつか特異な現象が続いた珍しい年だった。
年初、寒い日が続くと思っていたら、札幌で5日連続-10℃を下回る日が続いたと報じられ、水道管破裂などの被害が出た。厳寒の幕開けから一転、3月は例年より温かくなり、桜前線は観測史上最速で北海道に到達。松前では4/16にソメイヨシノが開花した。ちなみに今年は4月下旬の予測となっている。
そして何といっても夏の暑かったこと…。7月下旬から8月初旬にかけて猛暑日が続き、これも記録を更新。東川町でも同様に、最高気温の記録が連日塗り替えられていった。
そんな中で、農業は大丈夫だったのか。矢澤さんに聞いた。
まず水稲はそれほど被害を受けなかった。これには地下水が豊富で水量をコントロールしやすいという東川の地域特性の恩恵によるところが大きく、矢澤さんちでは収量は減ったものの食味は上々だった、とのこと。周辺の農家さんの中には例年より収穫できたという話もあったそうだ。
ダメージが大きかったのは転作している農地。少雨と高い気温による異常な干ばつの影響で、作物は悲鳴を上げた。日本農業新聞でも「渇く北海道」と題して、道内農業の被害を伝えている。
https://www.agrinews.co.jp/society/index/17278
干ばつの影響は、冬の三つ葉にも影響し、昨年は全く獲れなかったというから深刻である。
農業において、人間の勘は非常に大事だという。それは機械化・IT化が進んだ現代でも変わることはない。矢澤さんちでは、スタッフがその日の作業を日報にまとめ、データ化して蓄積している。いつ種を捲き、どのように手入れをし、いつ収獲したか。気象情報や経験をふまえて、判断を繰り返し続けてきたその軌跡から見えるのは、人間の勘は大事だということ。「高島暦ってご存じですか?」と聞かれ、「?」となった。名前は聞いたことがあるような…
調べたところ、高島暦は、正式には「高島易断暦」という名で知られる、「易」つまり占いを元にした、昔ながらの日本のカレンダーである。神宮館という出版社が今も発行しており、装丁を見ると、そういえば実家の神棚にあったような…。日々の年・月・日の行動指針に加え、行事、冠婚葬祭、暦の知識等が盛り込まれた、暮らしの便利帳といえるアイテムだろうか。判断材料として参考にすることがあるとのこと。
ことわざ、格言、慣習など、人々の暮らしから生まれ、脈々と受け継がれてきた事象が、現代になって科学的分析によって正しさが証明されるということがある。例えば瞑想は精神の鍛錬として何千年も実践されてきたが、脳に変化を起こし、ストレスを和らげるなどの事実が研究によって科学的に解明されたのは、ここ20~30年の出来事だ。農業においても「昔の人はすごいね」ということが多々あり、それが古い暦などにも表れているのであろう。月の満ち欠けを見る農家さんもあるらしい。
ことわざと言えばもう一つ、話題になったのが「卵が先かにわとりが先か」という問題。矢澤さんとベトナム人実習生の間でそんな話になったとのこと。
「私としては勝手に親鳥になったつもりで、みんなを育てようとしているという話をしました。だからにわとりが先で、卵が後。彼らもそれには同意見で、ベトナムには空から親鳥が降ってきたという言い伝えもあるとか。ベトナムの人たちは親をすごく大切にしているという印象があります。今年の冬に、みんなをスキーに連れていく予定が、旧正月にずれ込んでしまい、家族と時間を過ごしたいので、という本人たちの希望で中止になりました。私が『ご両親は元気?』と聞くと、「気遣ってくれてありがとう」と感謝されたり、うちを離れていった子たちも時々連絡をくれて、親のように慕ってくるのはとても嬉しいです。連絡してこないのはくやしい(笑)。」
先日、ベトナム人実習生のいじめ問題がニュースになっていた。そのような事業所があるのも事実。一方で矢澤さんのように親身に、そして真剣に実習生を受け入れているところがあることも合わせて報道してほしいと思った。